2026年の関西オフィス市場は、都市だけでなく、調査対象となるエリアやビル規模によって見え方が変わります。三鬼商事が公表する2026年8月時点の月次データでは、大阪主要6地区の平均空室率は3.10%で前月から0.14ポイント低下し、平均募集賃料は1坪当たり13,526円で前月から115円上昇しました。本記事では、大阪は2026年8月実績、神戸・京都は三菱地所リアルエステートサービスが2026年8月21日に公開した「エリアマーケットレポート/関西」8月号を基準に、公表時点と調査対象の違いを明示しながら、移転や契約更新で確認したい点を整理しておきましょう。
最新データは調査時点と対象範囲をそろえて読みましょう
空室率や募集賃料は、調査会社によって対象エリア、ビル規模、築年数、集計方法が異なります。たとえば、三鬼商事の「大阪主要6地区」と、別の調査会社が扱う「大阪市主要3区」や「大阪市中心部のグレードAオフィス」は、同じ市場を示す指標ではありません。数値の高低だけを並べず、調査時点と対象範囲を確かめることが欠かせません。
三鬼商事の大阪データは、大阪ビジネス地区の主要6地区にある延床面積1,000坪以上の主要貸事務所ビルが対象です。空室率は総貸室面積に対する募集床面積の割合で、退去前の募集面積も含まれます。平均賃料は基準階の募集賃料を坪単価で示したもので、共益費と消費税は含まれません。個別物件の成約賃料を示す数値ではない点にも注意しましょう。
大阪市:2026年8月の平均空室率は3.10%
三鬼商事の2026年8月データでは、大阪主要6地区の平均空室率は3.10%となり、前月比で0.14ポイント低下しました。平均募集賃料は1坪当たり13,526円で、前月より115円上昇しています。8月時点では、空室率が下がる一方、募集賃料は上がる動きが確認できます。
ただし、この数値を大阪市内のすべての事務所へ当てはめることはできません。対象は延床面積1,000坪以上の主要貸事務所ビルです。中小規模ビルや郊外の物件、店舗利用を含む区画では条件が異なるため、検討中の物件と規模・立地・設備が近い募集情報を比較しましょう。
参考として、コリアーズが対象とする大阪市中心部のグレードAオフィスでは、2026年第2四半期の空室率は2.5%、平均賃料は1坪当たり19,800円と報告されています。これは8月の市場全体を示す数値ではなく、一定の立地・規模・設備水準を満たすビルに限った四半期データです。三鬼商事の8月データとは調査対象と時点が異なるため、補足資料として確認するのが適切です。
神戸市:公表時点の違いを踏まえて募集条件を確認
三菱地所リアルエステートサービスが2026年8月に公表した「エリアマーケットレポート/関西」では、神戸市のオフィス空室率は2026年に入って低下傾向と整理されています。同資料では、募集賃料が2026年2月に1坪当たり13,347円となり、資料上では2022年4月以降の最高値とされています。
この数値は2026年2月時点の集計値であり、8月の実績ではありません。大阪の8月データと同じ時点の数値として比較しないようにしましょう。また、募集賃料は実際の契約賃料を保証するものではありません。神戸で移転先を探す際は、賃料に加えて共益費、保証金、内装費、原状回復条件、空調の利用時間などを含めて候補を比べると判断しやすくなります。
京都市:都市の傾向と個別物件を分けて判断
2026年8月21日公開の関西レポートには、京都市の空室率と募集賃料の推移も掲載されています。この記事では旧5月号の記述を根拠にせず、同8月号の掲載内容を基準にしています。ただし、公表時点が8月でも、グラフに掲載された各数値の調査月がすべて8月とは限りません。大阪・神戸と同じ動きだと決めつけず、資料内の調査時点と対象範囲を確認しましょう。
京都市内でも、中心部と周辺部、駅からの距離、床面積、築年数、建物仕様によって募集条件は変わります。都市全体の集計値は候補を絞るための背景情報とし、最終判断では実際の募集図面と契約条件を確認するのがおすすめです。
移転を検討する企業が確認したい5つの項目
空室率が低下する局面では希望条件に合う候補が絞られることがありますが、市況だけを理由に契約を急ぐ必要はありません。先に社内条件を整理し、比較の基準をそろえておきましょう。
- 必要面積:座席数だけでなく、会議室、収納、来客スペース、将来の増減も整理する
- 総コスト:賃料、共益費、保証金、移転費、内装費、通信工事費を合算する
- 設備条件:電気容量、空調時間、通信回線、セキュリティ、搬入経路を確認する
- 契約日程:現契約の解約予告期間、新旧賃料が重なる期間、工事期間を逆算する
- 契約条件:中途解約、更新、原状回復、指定業者の有無を契約書案で確認する
候補が少ない場合は、入居希望日、駅距離、築年数、面積のうち、調整できる条件を決めておきましょう。譲れない条件と調整できる条件を分けると、候補が見つかったときに社内判断を進めやすくなります。
契約更新では移転費用と現契約を同じ表で比較
募集賃料が上昇していても、更新と移転のどちらが適切かは企業ごとに異なります。月額賃料だけでなく、内装工事、什器、引っ越し、原状回復、二重賃料が生じる期間、業務への影響を同じ表にまとめて比較しましょう。
賃料改定の申し入れを受けた場合は、申し入れ内容と根拠、現契約の条項、条件が近い複数の募集事例を確認します。募集事例と実際の成約条件は同一ではないため、単一の募集情報だけで結論を出さないことが大切です。
オーナーは市場指標と物件固有の条件を分ける
空室率の低下や募集賃料の上昇は参考材料ですが、個別物件の賃料を一律に引き上げられることを意味しません。入居中テナントとの契約内容、空室期間、設備、改修費、立地や規模が近い募集物件を確認したうえで条件を検討しましょう。
空室募集では、賃料だけでなく、引き渡し状態、工事区分、空調利用時間、看板の可否、入居可能時期を分かりやすく示すと、入居希望者が比較しやすくなります。市場全体の指標と物件固有の条件を分けて考えることが、過度な値上げや値下げを避ける助けになります。
まとめ
2026年8月時点の三鬼商事の月次データでは、大阪主要6地区の平均空室率は3.10%、平均募集賃料は1坪当たり13,526円でした。前月と比べて空室率は0.14ポイント低下し、募集賃料は115円上昇しています。これを大阪の最新基準データとし、神戸・京都については各資料の調査時点と対象範囲を確認して読み分ける必要があります。
移転や契約更新では、市況だけで判断せず、希望条件、総コスト、既存契約、設備、工事日程をそろえて比較しましょう。数値は掲載時点の公表値です。最新情報は各調査会社の資料と、検討中の物件の募集条件で確認してください。
出典
- 三鬼商事「オフィスマーケット」(大阪主要6地区、2026年8月時点)
- 三菱地所リアルエステートサービス「エリアマーケットレポート/関西」2026年8月号(2026年8月21日公開)
- 同レポート 2026年8月号 PDF
- コリアーズ「大阪市中心部・グレードAオフィス|2026年第2四半期」



